解熱薬(いわゆる熱冷ましの座薬など)はとても広く使われている薬で、一般的には生後6ヶ月のお子さんからお使いいただけます。
 風邪などで熱がありつらそうにしている子どもを見ているのは、親としてもつらいものです。
 しかし、感染症における発熱は病原体の活動をおさえる体の防御反応であり、本当に薬で熱をさげてしまってよいのでしょうか?
 当院では下記のデータにもとづいて患者様にご説明をさせていただいています。

 

 これは、
 Does the Use of Antipyretics in Children Who Have Acute Infections Prolong Febrile Illness? A Systematic Review and Meta-Analysis
 という論文の表とグラフです。
 Systematic Review(システマティック・レビュー)というのは、同じテーマの論文をいくつか統合的に検討して結果を導くもので、
 さらに、この論文で扱っている5つの論文はすべてランダム化比較試験を行っており、
 エビデンスベーストメディシン(科学的根拠に基づく医療)ではもっとも質の高い根拠とされるものです。
 
 表はGupta、Kramerらのものが一般的なウイルス感染症、ほかのものはマラリアを対象としています。
 調査対象はChildrenとあるように、乳児から小学生です。
 右のグラフは結果を視覚的に表したもので、まんなかの線から離れれば離れるほど熱のある期間が短いことを示しています。
 まんなかの線から左側が解熱薬を使った場合、右が使わなかった場合で、すべて解熱薬を使用した場合で有熱期間が短いという結果でした。
 論文では全体を通して解熱薬を使用すると4.16時間有熱期間が短く、ちょうど解熱薬の効果時間の分だけ短いと推察されます。

 論文は、発熱は生体の防御反応なので、解熱薬を使った方が感染症の治りが悪くなるのではないかという仮説にもとづいて検証されました。
 しかし、結果は逆となり、解熱薬に感染症からの回復を遅くする根拠はなかったと結論しています。

 このことから、当院では、食欲が落ちる、不機嫌、寝苦しいなどの症状があれば積極的に解熱薬を使うようにお話ししています。
 高熱であれば解熱薬は3から4時間程度で効果が切れてきますので、1歳以上で体格が良ければ、4時間あけて1日4回まで使用可能としています。
 年齢が低ければ低いほど予備力が小さく、絶食状態が続けば子どもはたやすく体のバランスをくずしてしまいます。
 少しでも苦痛や倦怠感をやわらげ、熱のある間も食欲や体力のある状態をたもつ、これがうまい解熱薬の使い方だと考えます。

 反対に、たとえば40℃の高熱でも活気があり、食事も取れているようなら解熱薬を使う必要はありません。
 38.0℃や38.5℃で熱冷ましを使うというのはあくまでも目安であり、実際にはお子さんの様子を見て使い分けていただくのがよいでしょう。
 4、5日ずっと熱が続いている、解熱薬を使っても食欲がもどらない場合は受診が必要です。

 さらにもうひとつお話しします。
 熱性けいれんは子どもでは一般的な病気です。患者様には、「熱に頭がびっくりしてけいれんをおこす」と説明しています。
 確かにインフルエンザなど高熱の方がおこしやすいのはおこしやすいですが、中には微熱程度でけいれんをおこす人もいます。
 熱性けいれんには解熱薬はよくないという主張があります。
 本当のところはどうなのでしょうか?

 Do antipyretics prevent the recurrence of febrile seizures in children? A systematic review of randomized controlled trials and meta-analysis
 これもランダム化比較試験のシステマティック・レビューです。
 これは、解熱薬で熱を下げ続ければ熱性けいれんはおこならないのではないかという仮説を検証するために行われたものですが、
 結果は、解熱薬を使っても使わなくても、けいれんの頻度は変わらない(解熱薬でけいれんが減ったり増えたりしない)というものでした。

 日本では熱性けいれんのある人に解熱薬はだめという意見が根強くありますが、最近ではそういったお子さんでも解熱薬は問題ないというのが主流です。
 当院でも熱性けいれんをしたことがあるという理由で、解熱薬を禁止にすることはしません。

 しかし、けいれんがおこる時はおこります。けいれんをおこしているお子さんを目の前にして、冷静でいられる親はそういないでしょう。
 ご心配であればすぐに救急車を呼んで構いません。
 繰り返していてある程度慣れているようであれば、5分間は様子を見て、それ以上けいれんが続くようなら救急車を呼んでください。

 解熱薬をうまく使って、熱のあるつらい時期をうまく乗り切りましょう。

 参考 当院での頓用薬の使い方